公演にあたって

　劇団北芸代表　加藤　直樹　　　　

数年前からの私たちの念願であった事が、このようなすてきな名称の演劇祭として実現しました。大変うれしくて、はりきらざるを得ない気持ちです。 　この『眠っちゃいけない子守歌』は、去る’97年5月から6月にかけての2ヵ月にわたり、駅前通り芝居小屋で10回の上演を行いました。その再演です。この公演では上演方法に少し工夫を凝らし、男・女の二人芝居を男優3人、女優2人が毎回組み合わせを変えて6通りの二人芝居を上演したものでした。相手が変わると呼吸が変わり、同じ演目が6通りの芝居になるような、不思議な、楽しい苦労？を味わった事を思い出しております。今回のキャスティングもその時の組み合わせの一つです。 　私たち劇団北芸は’98年7月に釧路駅前から現在の港町に芝居小屋を移しました。駅前通り芝居小屋でのさよなら公演もまたこの演目であり、思い出深い、そして大事にしていきたい作品なのです。小劇場演劇祭での上演にあたり、新たな気持ちで、気持ちを込めたケイコに取り組んでおります。どうぞお楽しみください。

　劇団北芸の活動拠点は『波止場の芝居小屋』です。場所は港町4番地。釧路港発祥の地で、明治41年春、新聞記者としての仕事に挫折した石川啄木がひそかに釧路を離れたのはこの波止場からだったのかも知れません。昭和40年代までは釧路港の中心であり、そのころの面影をとどめる“床屋さん”とか仕込みの店とかが今も残っています。西の方に新しい港が出来てからはかつての活気は失われましたが、潮風のさわやかさと夕陽の美しさは変わりません。ときには深い霧に包まれることもありますが‥‥。このすてきな場所にある芝居小屋で、私たち北芸は稽古をし、公演をしています。釧路に来られる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。